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以下の内容は「エンドブレイカー!」の二次創作です。
 
※    ※    ※

戦神海峡アクスヘイム中層区のとある区画のそのまた外れ、焼け落ちた一件の家屋。
誰にも忘れられたようなそこに彼はいた。
その場所にあった筈の玄関から、かつての自分の家を、ただ言葉も無く。
「――――」
微かに動いた唇。
冷たい風の音だけの静寂の中でも尚擦り切れた音のあとに、彼は手にしていた簡素な花束を足元に置いた。この行為の意味を求めるように顔上げてみても、そこには墓標代わりとすら言えないただの燃え残りがあるだけ。
そんな些細なことでも罪になるのだと言うように。
「……ぁ、」
許してほしいとただひとつ手向けた花束でさえ強い風が吹いて路地に投げ出されてしまった。
元の位置に戻そうかと考えて、やめた。二度目の拒絶には耐えられそうにない。
だから無言のまま彼は幼き日を過ごした場所に背を向ける。途端鼻の奥がツンとして、けれど出てきたのは寒さからくるくしゃみだけだった。とても悲しい物語を読んだあと泣きそうなのに涙がこみ上げてこなかったことを彼は今更のように思い出す。
そうして思い出したついでとばかりに、そういえばと懐から小箱を取り出した。中に入っているのは指先大の紙筒が数本、ひとつ取って口に咥える。
マッチで火をつけて、ふ、と一拍の吸気。
「……、……けほ」
少しむせながらも息を吐けば、真冬の吐息のような白煙が上がった。
煙草である。ここへ来る途中寂れた露店通りで買ったものだ。
どうして煙草なのかは考えてみたけど分からない。我が事なのに困ったもので。
「こんなもので大人になったつもり、か」
過ぎた背伸びに自虐を禁じ得ない。
あるいは憧れ、か。
「……苦いな」
 
吐き出した煙。
はじまりの燃え痕で未だ燻る炎のように、白煙が空に昇っていた。
 
 
――――「ここから、ふたたび」 end.
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